hospital
がんセンター

医師。テレビドラマでは親身になってがん患者と寄り添う診察現場のシーンがよく出てくるが、あれは、かなり稀なケースだと思う。実際のがんセンターの医師たちは冷たい人が多いと感じる。あるいは長い間のがんセンター勤務で心が乾いてしまったのかも知れない。
半年前に手術の終わった患者が定期的な抗がん剤治療のため診察室に入る。患者は「よろしくお願いします」と頭を下げる。
医師はPCに向かい本人の名前を確認すると、パソコンに向かい「えーと、右でしたっけ、左でしたっけ・・・・、両方でしたっけ・・・・。・・・・。どうですかあ、変わったことはありませんか?」。患者の顔を見ることはない。
患者は医師の態度で落ち込む。だが「手が痺れて物が掴めないんです」と気を取り直して患者は訴える。医師はムッとして「抗がん剤副作用の痺れは取れるのに時間がかかるって前にも言いましたよね!」。患者の話を聞くこともなく「じゃあ、痺れの薬、増やしますか!・・・・どうしますか」。診察室は医師のホームグラウンド。患者はアウェイ。だから診察室は医師の支配的な空気でいっぱい。だから患者は弱い立場だ。
患者は手術後、色々な副作用で毎日、苦しんでいる。辛くて抗がん剤治療を止める人もいるくらい、それは過酷。そんな中、医師と会話ができる診察の時間は患者にとっては救い。医師にとっては何百人のうちの一人だろうが、患者にとっては3週間に一度、たった10分間の救いの時間。だが医師は患者の気持ちを知らない。共感もしない。
体の節々が痛いんです➡「整形外科に行ってみたら?そんなに不安なら骨シンチやってみますか?」
血圧が低いんですが大丈夫でしょうか?➡「主治医か内科の先生に相談してみたら?こちらで診ると越権になりますから」
倦怠感で居眠りしてしまうんですが➡「眠れるのはいいことですよ・・・・。これからも色々なこと起こりますよ」
抗がん剤の副作用を訴えてもパソコンを見るだけで患者の苦痛を聴こうとしない医師。きっと医師の心の中に「命が助かったのだからいいでしょ。これくらいのこと我慢しなくっちゃ。亡くなる人だっているんだから」という気持ちがあるのではないか。術後のQOLのこと、がんセンターは考えない。
がんセンターの医師は自分でがんになってみるといい。死の恐怖、運命の悲しみ、再発の不安、肉体的な苦痛、経済的な重圧や家族への申し訳ない気持ち・・・・自分で体験してみるといい。そうすれば共感するいい医者になれる。そして、がんセンターは今より良くなる。
「がんになってみるといい」なんて、これは暴言だ。だが、医者はそれ以上の暴言を吐き、無意識に患者を傷つけている。それをリカバリーできるのは看護師なんだが。