病院
ナイチンゲールはどこ行った(2/3)
(4)ベッドの横には二つのナースコールできる端末がある。一つは話ができるマイク・スピーカーが内蔵されたもの。
もう一つはただ押し釦があるだけのもの。ある日、午前中の点滴が終った(液バッグもチャンバーの空になった)ので抜針を待っていたが誰も来ない。
30分待っても来ないので押し釦を押した。20分位待っただろうか。
ようやく看護師さんが「お待たせしましたー」と言いながらやって来た。合計50分待ってようやく抜針、自由の身になれた。
患者は50分間、我慢したという思いがあるが、看護師にはその時間の重みはなく、抜針をする医療行為のみが時間の重みとなる。
患者としては50分も待たされた、看護師としては順番にやっている、という時間の重さの差がある。
2時間待ちで医師の5分診察という話もこれと同じ時間の重さの差。
(5)私が入院していた病棟には15人位の看護師が勤務していた。そのほとんどは20代で若かった。点滴を取り換えた後の滴下スピードの
調整などは個人差が大きかった。滴下スピードの速い場合は点滴液の吸収が血管からしみ出し、そんな時は次の日、腕が腫れた。
苦情を言っても看護師な毎日替わるので責任を感じにくい。苦情の内容をパソコンに記録するわけでもないのでその苦情はチームには
伝わらず、だからまた誰かが繰り返すことになる。会社や工場ではありえないことがこの病院では常態化していた。
患者の多くは慢性期で高齢者の人たち。不満は我慢してしまう。または苦情など話すことが身体的に上手くできない人たち。
だから看護師たちも気付きにくい。あるいは気付いたとしても毎日入れ替わるメンバー間で問題として共有されにくい。
事実、私は看護師に改善して欲しいと頼んだことがあるが「一応、上に言ってはみます」と返された。私もそれ以来、申し入れはしなくなった。
私は諦めた。
(6)患者の家族にも問題があった。私は4人部屋だった。家族との会話はいやでも聞こえてくる。3人の患者の家族は滅多に来なかった。
見舞いというよりは「新聞、止めようか?」、「請求書来てるけど、どうする?」、「〇〇さん来たけど入院してるって言っとこうか?」など。
面会時間は15分なので用事だけ済ませて「また来るからね」となる。家族が患者から困っていることはないかと話しをする時間はない。
だから家族が看護師に相談するという機会は非常に少ない。病院側の感染対策で面会時間が短くなり、患者の家族は蚊帳の外に追いやられた格好だ。
(3/3)に続く