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世襲というやり方

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世襲というやり方

上場していなくても資金が潤沢で代々世襲で続いている会社は多い。むしろ、外部資本を入れる必要がない、上場しない優良企業も少なくない。規模を追わず堅実に利益を積み重ねてきた会社だ。しかし、世襲は安定を生む一方で、停滞も生む。世襲そのものが問題なのではない。

私が見てきた三人の世襲社長。

A社の場合
三代目社長は穏やかだが芯がある。二人の息子も自社の要職に就き長男が四代目後継と目されている。一次卸の商社で資金も在庫も潤沢。かつて電機メーカーの減産時にはその在庫でサプライチェーンを支えたこともある。商社のダムとしての役目を果たした。
社員は商社の役割を理解している。会社は休日に社員の家族を招待する形で楽しい行事を開催することもある。この会社では、世襲は“血”だけでなく、会社は何のためにあるのか、なにを継承するのか、理解されている。

 B社の場合
こちらは四代目。先代の社長(父)から十分な時間をかけて学ぶことをしなかった。資金は潤沢、顧客は大手が多い、粗利も高い。経営に大きな成功もないが失敗もない。しかし、失敗がないことと、経営が機能していることは違う。以前は画期的な新商品をいくつも開発し売上を伸ばした。その時に活躍した社員は、経緯を知らない四代目に評価されることもなく大多数は会社を去った。
社長の周囲はイエスマンの役員で固められ人事はその閉じた役員会で決まった。役員会は形骸化、空気を読む時間となった。有能な社員は去って行った。ここでは世襲が躍動の継承ではなく、権限の固定化になってしまった。

C社の場合
二代目は先代の急逝によって急遽、社長になった。準備のない継承だった。製造業であるにもかかわらず、工場運営のノウハウも十分には引き継がれなかった。社長は社交的で外の会合には顔を出す。だが社内の細部、特に会社の軸である、ものづくりには通じていない。工場実務を担っているのはもっぱら長男だ。経理部長は社長の妻である。社員は現実を理解している。誰が現場を回しているのかも知っている。
父と子という関係は役割を曖昧にした。製品開発をめぐる意見の溝は埋まらない。議論は経営判断に繋がらず、家族の力学で解を得る。会社は動いている。だが方向は定まらない。会社は私的所有であっても社会の公器であり存在は社会にある。それを倫理として確立できないとき、世襲は社会から離れ私事になる。世襲は悪ではない。日本の中小企業の多くは世襲で持続してきた。だが、世襲は血統ではなく継続と改革の歩みであって欲しい。継ぐのは名字ではない。継ぐのは責任と判断、そして会社を家族から切り離すという覚悟だ。

世襲によって強くなる会社と弱くなる会社の違いは、血の濃さではなく改革の継承だと思う。

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