manufacturing
ものづくりの国 日本 経費節減
私は、ある日、日本の自動車メーカーに行きました。新製品の紹介で伺いました。その製品は欧米では乗用車に広く使われ始めた安全確保用の電子製品でした。
商談は社員食堂で行われました。
食堂は照明が半分消され薄暗い感じでした。経費節減のようです。しばらくすると技術部の方が二名、来られました。先ずは名刺交換をしました。いただいた名刺はコピー用紙のように薄っぺらく、文字通り、ペラペラしていました。経費節減だそうです。でも、印刷された会社のロゴは、誰もが知ってるあのメーカーのものでした。メーカーのブランド名と現実の名刺(ペラペラ)には相当なギャップがありました。一名の方の名刺は電話番号が変更になったからと、手書きで番号が訂正してありました。「経費節減なので手書きです」と担当者。
商談が終わり私が食堂のメニューを見ていると、同行の商社の人が「ここの人たち、社食では味噌汁を飲まないみたいですよ」と。どうしてかと聞くと「味噌汁の代わりに水を飲むんです」と。これも経費節減ということでした。
日本の自動車メーカーは「味噌汁なし」までしないと世界で勝てない状況のようです。自動車メーカーは産業ピラミッドの頂点にあるので、この厳しいコスト意識は日本の全産業に影響を与えていると思います。新橋(東京都港区)のランチ弁当でさえ、無縁ではありません。昔の弁当は500円(ワンコイン)でしたが、今は380円のところも珍しくないのです。ピラミッドの頂点から降ってきた経費節減はバリューチェーンとなって自動車産業を超え、新橋のランチ弁当にまで影響を与えているように感じます。
結局、商談は上手くいきませんでした。「値段が半額なら検討してもいい」ということでした。あのペラペラの名刺を受け取った時から分かっていた結果でした。
日本の自動車メーカー、大丈夫かなと不安になりました。