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BCP的オーベルジュ 千葉県館山市
昨年(2019年)の台風15号による房総半島の被害は記憶に新しい。まだ内房・南房にはブルーシートで屋根が覆われた家が沢山あります。屋根の修理は2年待ちだということです。(2020年1月情報)
修理するマンパワーだけでなく、屋根を作るメーカー側のリソース不足も原因だということです。
台風の風に対する恒久的な対策として屋根自体を強風に強いものに変えていくことも選択肢です。最近では風速70m/sにも耐えうる屋根も出てきました。窓も強化ガラスやシャッターで防護することも必要でしょう。そういう時代に入ったのだと認識しなくてはなりません。resilience, 私たちのハードもソフトも変わっていくことが求められています。
コロナ禍で旅館業は暗いニュースが多いですが、頑張っている宿もあります。オーベルジュ オーパ ビラージュ。千葉県館山市にあります。料理(フレンチ)は文句なしに美味しい。それはオーベルジュなので当たり前。建物はビビット。(ビビット:vivid, 明るい、鮮明な、強烈な、目の覚めるような)館山の宿というと風景はオーシャンビューと思いきや、海までは少し距離があります。その代わり、この宿、バックヤードは房総の草原を借景にしたポタジェ・ガーデンがあります。ポタジェとは庭の一種で、地面がみえないほど植物が混植してあること、園内に小さな塚があり植物が立体的に造形されていること、植物が日本庭園のように綺麗に切り込まれていないこと、大きな風が吹き抜ける地形に位置していること、植物の水源として小さな川が流れていること、そして、水田や麦畑、花やハーブ、野菜畑がコンパニオン・プランツとして混在し、鑑賞用だけではなく食用できる植物群があること、などが網羅された農園型庭園のことです。
畑だけ、花畑だけ、ハーブ園だけという宿はありますが、それらがポタジェとして混植され、宿のシステムとして生きている例は少ないと思います。今年はズッキーニが強風で駄目になったそうですが、ナス、3種類のトマト、ピーマン、ピー太郎、インゲンは収穫され料理に使われているということです。水田のお米は今年は「ひとめぼれ」。ポタジェ・ガードナーとレストランのシェフが育てているそうです。
この宿のフロントヤードはプールやハンモックなどエンターテインメント性のおもてなしがあり、対照的にその裏のバックヤードは実用的で実用美があり鑑賞に堪えるポタジェがあります。災害の多い日本。おそらく今後、このようなBCP的な宿が自治体としても一定量必要となり、宿の機能や役割も変わっていくと思います。
再生可能エネルギーの活用も含め、宿やレストラン、スーパーマーケット、あるいは住宅にとってもポタジェはBCPのベンチマークとなっていくでしょう。